「動画マーケティングに取り組んでみたけれど、思ったほど効果が出なかった」
そんな経験はありませんか?
動画は確かに魅力的なコンテンツです。が、やみくもに制作しても成果にはつながりません。本当に成果を出している企業は、動画の“見せ方”ではなく、“使い方”に明確な戦略を持っています。
そこで、今回の記事では
今回の記事でわかること
- 動画マーケティングで結果を出すための5つの原則
- 実際の成功事例
- よくある失敗
- 成果を出す企業の習慣
- 効果測定とKPI設計
を解説します。

執筆者
この記事は、動画制作・デザインを手がける「ワイラボ」の代表が執筆しています。普段は企画やディレクションの立場から、現場チームと連携して映像制作に関わっており、その経験から得た視点でお話ししています。
1. 動画マーケティングで成果を出す5つの原則
動画を作っただけで結果が出る――そんな幻想を抱いていないでしょうか。
たしかに動画は、伝わりやすく、感情に訴える強力な手段です。しかし、やみくもに作っても、再生回数が伸びても、それが「成果」に直結しないケースは山ほどあります。
この章では、成果を出すための「5つの原則」を、実際の現場で見た視点で解説していきます。
①明確なKPI設計がなければ成果は出ない
成果が出ない動画の多くは、そもそも「何をもって成功とするか」が曖昧です。つまり、KPIが明確でないまま制作がスタートしているのです。
たとえば、「動画をとにかく多くの人に見てもらいたい」という依頼はよくあります。でも、それだけでは意味がありません。再生回数が100万回を超えても、売上が1円も増えていなければ意味がないのです。逆に、たった500回の再生でも、問い合わせが30件あれば、それは大成功といえるでしょう。
動画マーケティングにおいては、以下のようなKPIを、目的別に設定する必要があります。
目的 | 適切なKPIの例 |
---|---|
認知拡大 | インプレッション数、再生回数 |
リード獲得 | LP遷移数、フォーム送信数 |
売上アップ | 商品ページへの遷移数、CV率 |
ブランド構築 | 視聴完了率、SNSでの言及数 |
まずは「何のためにこの動画を作るのか?」を明確にし、その目的に直結するKPIを定めること。それが、成果を出すための第一歩です。
②「視聴される」だけでは意味がない
よく「動画がバズった」「再生数が◯万回突破!」という話を耳にします。もちろん、それは一見すると成功です。でも、再生されたあとに何が起きたのか?ここを見落としてはいけません。
たとえば、商品を見せた動画を作ったのに、ECサイトへの遷移がゼロでは、完全に失敗です。なぜなら、マーケティングにおいて重要なのは「次のアクションを引き起こせたか」だからです。
視聴者に何をしてほしいのか?たとえば資料請求なのか、購入なのか、問い合わせなのか。目的を明確にし、その行動を促す仕掛けを動画内やその後に用意する必要があります。視聴完了で終わってしまっては、「見られて終わり」です。
③ユーザーの心理と導線設計が鍵を握る
成果を出す動画の共通点は、「視聴者の心理を理解し、行動の導線が設計されている」ことです。これは一言で言えば「ユーザー目線で考えられているかどうか」に尽きます。
たとえば、新サービスを紹介する動画で、「いきなり機能説明から始まる」ケースがあります。ですが、視聴者はそのサービスに興味がある前提ではありません。まずは「どんな悩みを解決できるのか」から入る必要があります。
そして、動画を見たあと、どのページに遷移するか?フォームはシンプルか?視聴者の「気持ちの流れ」に合わせて、スムーズな行動導線を用意しなければ、せっかくの動画も無力です。
④動画単体ではなく“マーケティング全体”との連携が必要
動画はあくまで「施策の一部」でしかありません。にもかかわらず、単独で考えがちです。これは非常に危険です。
たとえば、広告で動画を流しても、遷移先のLPが弱ければCVしません。また、動画で訴求した内容と、WEBサイトや営業トークがズレていれば、ユーザーは混乱します。
成果を出すには、「動画×LP」「動画×SNS」「動画×営業資料」など、動画を含むマーケティング全体を“連動させる視点”が不可欠です。コンテンツを横断して一貫性を持たせることが、信頼と成果の両方を生み出します。
⑤実施後の改善サイクルが成果を分ける
最後のポイントは、「やりっぱなし」にしないことです。実際、動画を一度作ったらそのまま放置、というケースは少なくありません。しかし、それでは成果の最大化は望めません。
再生数が伸びない、CV率が低い、離脱が多い…そういったデータは、すべて改善のヒントです。たとえば、冒頭の3秒で離脱が多いなら、最初の構成に問題があるかもしれません。
一度作って終わりではなく、データを見て改善し、ABテストを繰り返していく。このサイクルを回す企業ほど、結果を出しています。動画は“使って育てる”ものです。
2. 実際に成果を出した動画マーケティング事例
動画マーケティングは、実際に“数字としての成果”を出してこそ意味があります。ところが、多くの企業が「成功事例は大企業の話でしょ」と思い込み、自社の施策に活かしきれていないのが現実です。確かに、予算やリソースに限りがある中小企業では、大規模な施策は難しいかもしれません。しかし、成功している企業の多くは、規模に関係なく「戦略的に動画を使っている」という共通点があります。
この章では、実際に成果を出している事例を、BtoC、BtoB、地方企業という異なる視点から紹介します。ただし、表面的な“うまくいった話”ではなく、「なぜ成功したのか?」を本音で掘り下げます。
動画マーケティング事例①BtoC:ECサイトの売上2.8倍
あるアパレル系ECサイトは、新作商品の売上が伸び悩んでいました。従来の静止画とテキスト中心の訴求では、商品の魅力が十分に伝わらなかったからです。そこで導入したのが、30秒の短尺商品紹介動画でした。
動画では、モデルが実際に着用し、動きの中で商品のシルエットや質感を見せました。特に重視したのは「映える」ことではなく、「リアルな使用感」を見せること。その結果、導入初月から当該商品の売上が2.8倍に。さらに、視聴後の遷移率も通常の3倍を記録しました。
この成功のポイントは、“商品の魅力を視覚で訴える”だけでなく、“購入までの導線を丁寧に設計”したことです。動画の下に商品リンクを設置し、迷わず購入ページに遷移できるようにしたのが大きな要因でした。
動画マーケティング事例②BtoB:営業リード獲得単価を1/3に削減
IT系のBtoB企業では、営業リード獲得に苦戦していました。ホワイトペーパーのダウンロードやセミナー集客では限界があり、「もっと刺さるコンテンツが欲しい」という課題があったのです。そこで取り入れたのが、課題解決型の解説動画でした。
2分程度の動画で、ターゲットが抱える課題と、その解決法としての自社サービスを紹介。さらに、LPへの導線を明確に設計しました。結果として、動画経由でのリード獲得単価が従来の約1/3にまで下がり、営業部門の負担も大幅に軽減されました。
この事例で特に注目すべきは、「誰に、何を届けたいか」が明確だったことです。視聴者は、自分の悩みを“理解してくれる”コンテンツに出会うと、自然とアクションを起こします。その点を動画でしっかりと表現できたことが、成果につながった要因です。
動画マーケティング事例③地方企業:SNS動画で認知拡大→来店増加
地方の小規模カフェが抱えていた課題は、「地元では知られているが、新規の集客が伸びない」ことでした。そこでSNSを活用し、毎週1本の短い動画を投稿する戦略を開始。動画では、季節限定メニューの調理風景や、店主のちょっとした一言など、温もりある“日常”を切り取って発信しました。
すると、Instagramのフォロワー数が3か月で2.5倍に増加。動画に「見て来ました!」という来店者が徐々に増え、特に平日の集客が顕著に改善されました。
ポイントは、「広告っぽさ」を排除したことです。いわゆる“映え”よりも、“共感”を重視した発信が、地域の人たちの心に届いたのです。地味に見える戦略でも、きちんと考え抜けば、大きな成果に結びつくことを証明した好例です。
動画マーケティング事例|よくある失敗と対策
動画マーケティングは、成功事例ばかりが取り上げられがちです。しかし、実際の現場では「うまくいかなかった」「予算をかけたのに成果が出なかった」という声も多く聞かれます。むしろ失敗の方が多いといっても過言ではありません。
けれども、安心してください。失敗には共通の“落とし穴”があり、そこに気づけば避けることができます。この章では、現場で本当によく見られる失敗パターンと、その具体的な対策について、包み隠さずお伝えします。
①目的が曖昧なまま動画を制作してしまう
まず一番多い失敗が、目的を明確にせずに動画を作り始めてしまうことです。「とりあえず動画を作れば注目されるだろう」「他社がやっているからうちも」という考えからスタートすると、ほぼ確実に失敗します。
目的が曖昧だと、訴求内容もぼやけ、ターゲットにも響きません。さらに、効果測定もできないため、結果として「なんとなく終わった」動画になります。
この失敗を防ぐためには、動画制作の前に「なぜこの動画を作るのか?」「動画で視聴者に何をしてほしいのか?」というゴールを具体的に設定することが重要です。動画は“目的を達成するための手段”であり、それを見失うと方向性がブレてしまいます。
②ターゲットとメッセージがズレている
もう一つ多いのが、動画のメッセージが視聴者に合っていないケースです。たとえば、若年層をターゲットにしているのに、堅苦しいナレーションや難しい言葉を使ってしまう。逆に、ビジネス層向けなのに、カジュアルすぎるトーンで信用を損なってしまう。
これは、ターゲットの設定が浅かったり、ペルソナの理解が不足していたりすることが原因です。どんなにクオリティの高い動画でも、見る相手に響かなければ意味がありません。
対策としては、制作前にペルソナをしっかりと設計し、その人が「どんな情報を求めているか」「どんな言葉で伝えれば刺さるか」をチーム全体で共有することが大切です。
③「かっこいい動画」にこだわりすぎて効果が出ない
予算をかけて、プロっぽい、オシャレな動画を作った。映像も音楽も洗練されていて、自分たちとしては満足。でも、それがまったく成果につながらない。これもよくある落とし穴です。
実は、動画マーケティングにおいて“かっこよさ”は二の次です。重要なのは「見た人が行動を起こすかどうか」です。自己満足になってしまった動画は、視聴者にとってはただの「長くて退屈な映像」になってしまうこともあります。
ここでの対策は、「誰のための動画か?」という視点を忘れないことです。自己表現ではなく、視聴者にとっての価値を基準に制作することで、成果の出る動画に近づけます。
④配信や活用の導線が設計されていない
動画を作っただけで満足して、活用の設計をしていない。これも非常に多い失敗です。動画は作って終わりではなく、「どう届けるか」「どう見てもらい、どうアクションにつなげるか」が重要です。
実際、せっかく良い動画を作っても、YouTubeにアップして放置、SNSに1回投稿して終了、というケースも少なくありません。これでは、動画が持つ力をまったく引き出せません。
有効な対策は、「配信設計」までを企画段階から織り込むことです。誰に、どの媒体で、どんなタイミングで届けるか。そして、動画の後に何をさせたいか。その導線まで含めて初めて、“マーケティング施策”として成立します。
成功企業がしている動画活用
動画マーケティングで継続的に成果を出し続けている企業には、実は“共通した習慣”があります。動画制作のスキルが高いとか、巨額の広告費を投下しているわけではありません。むしろ、それよりも重要なのは「動画をどう扱い、どう育てているか」という日々の運用の姿勢です。
成功する企業は、動画を“作って終わり”にはしていません。そして、マーケティング活動全体と一体化させながら、PDCAを回し続けています。この章では、そんな企業が当たり前のように実践している「3つの習慣」を、現場目線でリアルにお伝えします。
①定期的な効果検証と改善
まず最も基本でありながら、多くの企業が見落としがちな習慣。それが「効果検証」と「改善の継続」です。
動画は作ったら終わりではありません。YouTubeの再生数や視聴維持率、LPの遷移率など、取得できるデータは非常に多く存在します。ところが、それをチェックせずに放置しているケースが実に多い。結果、「何が良くて、何が悪かったのか」がわからないまま、次の動画制作に入ってしまい、同じ失敗を繰り返してしまうのです。
成功している企業は、動画ごとにしっかりとKPIを設け、毎月のレポートで達成状況を確認しています。改善点が見つかれば、タイトルやサムネイルを変更したり、構成を再編集したりと、柔軟に手を加えていきます。こうした地道な改善の積み重ねが、最終的に大きな差となって現れるのです。
②部署横断の連携(営業・広報・SNS)
もう一つの成功パターンは、「部署をまたいだ連携」ができていることです。特にBtoB企業では、マーケティング部門と営業部門の間で動画の使い方にズレが出ることがあります。たとえば、マーケ側は認知拡大を目的に動画を作っているのに、営業側はリード獲得や提案資料としての活用を求めている。こうした目的の違いが噛み合っていないと、せっかくの動画が持つ力が分散されてしまいます。
成功している企業は、動画制作の企画段階から、関係部署を巻き込んでいます。営業チームとディスカッションしながら、「実際の現場でどう使えるか?」を考え、広報やSNS担当とも連携して発信タイミングを最適化しています。
この“連携力”こそが、動画の効果を最大化する裏の鍵なのです。
③内製と外注の賢い使い分け
最後の習慣は、「リソースの使い方」がうまいことです。すべて外注するとコストがかさみますし、すべて内製でやるとクオリティや効率に限界が出てきます。そのため、成果を出している企業は、動画のタイプごとに内製と外注を戦略的に使い分けています。
たとえば、社内イベントやインタビュー動画など、ナチュラルで“人間味”が求められる動画は社内でスマホ撮影。一方で、ブランドイメージが問われる広告用動画や、クライアント向けの紹介映像はプロに依頼。このように、目的と役割に応じて最適な制作体制を組んでいます。
また、動画編集ツールやテンプレートを活用しながら、一定レベルのコンテンツを社内でスピーディーに量産できる体制を整えている企業も増えています。
動画マーケティングの効果測定とKPI設計
さて、ここからは動画分析における具体的なアドバイスを進めていきます。
「全体的な結果を分析する場合」「動画の質を分析する場合」「コンバージョン率を分析する場合」の3つの分析をする場合、適切な指標をご紹介します。
具体的な3つの分析方法
- 全体的な結果を分析する場合
- 動画の質を分析する場合
- コンバージョン率を分析する場合
①全体的な結果を分析する場合
「再生回数」
「1人あたりの平均視聴時間」
「1回あたりの平均視聴時間」
「動画のCV貢献数」
が、この場合に確認すべきポイントです。
また、日々データを分析する際、日ごとの指標はもちろん全体的な動きもチェックしておきましょう。
アクセスが多い、少ない曜日と時間帯、また何を理由としてアクセスに変動があるかを確認します。そうすることで、次の改善策につなげていけます。
動画マーケティングにおける全体的な結果とは、再生回数とコンバージョン率です。
どれくらいの視聴率を獲得し、どれくらい売り上げに貢献したかが、最終的な指標となります。
②動画の質を分析する場合
動画の質が良いか、ユーザーを飽きさせない工夫ができているかを見ていきます。この場合、
「再生回数」
「ユニーク再生数」
「1人あたりの平均視聴時間」
「1回あたりの平均視聴時間」
「再生完了率」
「視聴者離脱率」
を確認しましょう。
再生回数で全体的なアクセスを確認し、平均視聴時間、再生完了率、視聴者離脱率から、どのタイミングでユーザーが離れたのかを分析します。
ここで改善すべきポイントが見えてくるため、部分的な解決が可能になります。
ただし、ある程度の離脱は避けられないものだと考えましょう。増やさない努力を続ければ問題ありません。
③コンバージョン率を分析する場合
爆発的な再生回数を期待できなくても、コンバージョン率が高ければ動画マーケティングとしては成功していると言えます。
その状態からアクセスアップにつなげると、より高いコンバージョン率を期待できるでしょう。
そのために分析を続ける必要があるのは
「動画のCV貢献数」
「誘導キーワード」
上記にプラスして
「再生回数」
「ユニーク再生数」
「1人あたりの平均視聴時間」
「1回あたりの平均視聴時間」
「再生完了率」
「視聴者離脱率」
を視野に入れた分析が必要です。
すでにコンバージョン率が高い場合には、動画の再生回数と動画の質に注目してみましょう。
それほどアクセスを見込めなくても売り上げ拡大ができているのは、商品・サービスに魅力があると考えられます。ストーリー性に富み、テンポの良い動画を提供すれば、売り上げをさらに上げることは決して難しい課題ではありません。
動画マーケティングにおいて、分析を重ねながら改善策を打ち出すことは必要不可欠なポイントです。
目的に合わせた指標を確認し、次回につなげていくといいでしょう。
増減に一喜一憂せず、長期的な視点が動画広告成功に役立ちます。
動画マーケティング完全解説|まとめ
動画マーケティングは、正しく使えばビジネスの武器。でも、そうでなければ、動画を作って終わりで、終了です。
もちろん、“作って終わり”では意味がありません。そのため、目的や導線、運用体制まで含めた設計が必要です。
今回ご紹介した5つの原則や事例を参考に、自社の取り組みを一度見直してみてください。そして、もし成果に伸び悩んでいるなら、どこかに“無意識の落とし穴”があるかもしれません。本気で動画マーケティングに取り組むなら、戦略と運用がカギです。
あなたの動画が、ただのコンテンツから“売上を生む仕組み”に進化することを願っています。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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