ナレーション原稿のサンプルを探していませんか?
CMやYouTube、教育動画など、ナレーションが必要な場面は増えています。でも、原稿を自作するのは案外むずかしい。そんなとき、用途に合ったサンプルが手元にあると便利ですよね。
そこで、今回の記事では──
この記事で分かること
- 15秒・30秒で使えるナレーション原稿サンプル20本
- CM、教育、ドキュメンタリーなどジャンル別原稿がすぐ使える
- 収録を意識した原稿構成の工夫や作り方のポイント
- PREP法・音声表現・原稿レイアウトのコツも解説
とにかく「今ほしい」に応える内容からスタートしています。
ぜひサンプルを参考にしながら、あなたの声で“伝える力”を磨いてみてください!

執筆者
この記事は、動画制作・デザインを手がける「ワイラボ」の代表が執筆しています。普段は企画やディレクションの立場から、現場チームと連携して映像制作に関わっており、その経験から得た視点でお話ししています。
1. ナレーション原稿|無料で使える原稿サンプル集(15秒)
ナレーション原稿は、尺に合わせて的確な内容を構成する必要があります。
特に15秒という短尺では、情報を詰め込みすぎず、印象に残る言葉選びが重要です。
勢い、落ち着き、テンション、親しみやすさなど、ナレーションのトーンに応じて言葉の選定や語尾の処理にも工夫が求められます。
以下では、ジャンルとトーン別に分けた15秒のナレーション原稿を10パターン紹介します。
ナレーション原稿サンプル① プロテインCM風(勢いと爽やかさ)
朝の一杯で、カラダが変わる。プロテインなのに、まるでスムージー。美味しく、強く、美しく。今、あなたの筋肉が喜び始める。
この原稿は「テンション高めのCM風」に設計しています。短い中に印象的なフレーズを3段階で配置し、最後はリズムよく落とす構成です。勢いと爽快さを意識し、語尾も伸ばさず歯切れよく締めています。
ナレーション原稿サンプル② 旅番組風ナレーション(景色描写・落ち着き)
朝焼けに染まる、瀬戸内の小さな島。寄せては返す波の音が、旅人の足を止める。今日もまた、穏やかな物語が始まります。
旅番組系では、情景描写とリズム感が重要です。
起承転結の「承」で終わる構成にして、続きが気になるように設計しています。あえて間をとりやすい言葉を多く使い、ナレーションの余白も生まれやすくしています。
ナレーション原稿サンプル③ バラエティ紹介風(テンション高め)
このあと登場するのは、話題沸騰のアレ!ツッコミ全開、ボケが止まらない!?今夜のバラエティ、目が離せません!
エンタメ紹介ナレーションでは、テンポと語尾の上げ下げが勝負です。この原稿はあえて文節を短く切り、息継ぎをしながらリズムをつけやすく設計しました。読み手のテンションに大きく左右されますが、それだけに“腕の見せどころ”でもあります。
ナレーション原稿サンプル④ オンライン講座紹介(信頼感と明瞭さ)
「わからない」を「わかる」に変える。自宅で、隙間時間に。プロ講師が教える、本気のオンライン講座。はじめてみませんか?
この原稿は落ち着いたナレーション向けです。「わからない」「わかる」の対比を最初に置き、語調のメリハリを強調しています。語尾に疑問形を加えることで、自然な余韻と“締め”の感覚が得られるようにしています。
ナレーション原稿サンプル⑤ キッズ向け商品CM(かわいさと親しみ)
まんまるおめめの、ふわふわアニマルが動いた!おしゃべりして、笑って、いっしょにお昼寝。新発売!ふれあいモフモフランド!
子ども向け原稿では、語感が命です。「まんまる」「ふわふわ」「モフモフ」など擬音語を多用し、口に出すだけで楽しくなる音を意識しました。発音が転がるような構成なので、ナレーターが声で“遊べる”のもポイントです。
ナレーション原稿サンプル⑥ ゲームアプリ告知(スピード感と臨場感)
世界が崩壊する前に、君の手で運命を変えろ!リアルタイムバトル、フルボイス対応。いま、伝説が始まる——。
ゲーム系原稿は、短尺でも情報量が多くなりがちです。そのため、「呼びかけ→機能→盛り上げ」の3段構成を基本としています。語尾の言い切りや間の取り方で緩急をつけ、スピード感を出せるようにしています。
ナレーション原稿サンプル⑦ エコ活動の啓発(真面目・落ち着いたトーン)
私たちの未来は、今の選択で変わる。小さな行動が、大きな一歩に。プラスチックを減らす、それが今日からできるSDGs。
真面目な内容を15秒に落とし込むのは意外と難しいです。
この原稿は、リズムよりも「言葉の重み」に重きを置いています。トーンは一定、スローに読み進める前提で設計しており、啓発系にも適しています。
ナレーション原稿サンプル⑧ サービス案内(わかりやすく丁寧)
お部屋の掃除、代わりにやります。定額・安心・即日対応。暮らしの代行サービス、スマホで簡単予約できます。
商品・サービス紹介系は、端的であることが命です。「誰に何をどんな手段で提供するのか」を15秒で伝えるため、余分な飾りは削っています。スローよりやや早口で読んだ方が情報が整理されて聞こえる構成です。
ナレーション原稿サンプル⑨ お笑い番組オープニング(ノリとツッコミ風)
えっ、こんなことってある!?ツッコミたくなる奇跡が連発!笑って、叫んで、また笑って。今夜もおバカに全振りです!
お笑い系はとにかく“勢い”です。感嘆詞や擬似ツッコミを混ぜ、文全体をアップテンポで駆け抜ける設計にしています。イントネーションや間の取り方次第で、キャラの色を出しやすく、実は技術が問われます。
ナレーション原稿サンプル⑩ ラジオ風パーソナリティ(自然な口調)
今日はどんな一日でしたか?少し疲れた心に、音楽と声のごほうびを。深夜ラジオ、そっと寄り添う15分、始まります。
これは最も自然な語りを前提とした原稿です。声に表情を乗せやすい構成にしてあり、読点や語順を活かして「やさしい間」が作れるように設計しています。速読より、落ち着いた低音で読まれることを想定しています。
2. ナレーション原稿|無料で使える原稿サンプル集(30秒)
30秒のナレーション原稿は、情報量が格段に増えるため、構成力と語順の整理が求められます。
ただ長くすればいいわけではなく、聞き手が飽きないリズムや、言葉の緩急も重要なポイントです。
また、テーマによって語調やテンションを適切に切り替える柔軟さが必要です。
ここではジャンル別に、30秒ナレーションの実用例を10本ご紹介します。
① 教育系ナレーション(地球温暖化の説明)
地球の気温が、ゆっくりと、けれど確実に上がっています。南極の氷は溶け、海面は上昇し、多くの動物が住処を失っています。地球温暖化は、もう「未来の問題」ではありません。私たちの行動ひとつで、未来は変わります。
教育系原稿は
- 伝えるべき事実
- 感情を動かす言葉
のバランスが鍵です。
ここでは、原因よりも“影響”と“訴求”に重点を置いています。文章はやや平板ですが、読み手の抑揚で変化をつけることが求められます。
② 商品紹介ナレーション(最新スマートウォッチ)
メール通知も、健康管理も、手首で完結。新登場のスマートウォッチは、心拍や睡眠までリアルタイムでチェック。さらに、防水・長時間バッテリーで、日常もビジネスもスマートに。毎日が、ちょっとだけ未来になります。
商品紹介では「機能→利便性→未来感」という流れで構成。語句を短めにまとめ、読みやすさとスピード感を両立しています。過度な修飾を避け、「本当に欲しいかも」と思わせる具体性を大切にしています。
③ ドキュメンタリー風ナレーション(絶滅危惧種)
この森に、かつて何千羽もいた鳥が、今は数えるほどしかいません。人の手によって姿を消し、自然の声が静かになっていきます。残された時間は多くない。それでも、守る方法は、まだあるはずです。
ドキュメンタリー系では、センテンスの「余韻」が重要です。結論を言い切らず、あえて“含み”を持たせた表現にすることで、リスナーの感情に訴えます。トーンは低め、スローに読むのが適しています。
④ 企業紹介ナレーション(信頼感と実績)
創業50年。私たちは、地域とともに歩んできました。水道、電気、通信。暮らしに欠かせないインフラを支える技術と信頼で、次の世代へ、安心を届けます。社会を支える。そんな仕事を、私たちは誇りに思っています。
信頼感を与える原稿では、語順や語調の安定感が重視されます。インフラやBtoB業種では、“堅実で飾らない表現”が好まれます。過度に派手な言い回しは逆効果になることもあるので、注意が必要です。
⑤ キャンペーン告知(訴求力と行動促進)
今だけ!登録するだけで、初回30%オフ。さらに、友達紹介でもう1回チャンスが!このチャンス、逃す手はありません。期間限定の特別キャンペーン、いますぐチェック!
キャンペーン告知では、リズム感と数字がカギです。「今だけ」「◯%オフ」など、数字と時間制限を早めに提示することで行動を促します。急かしすぎないギリギリのテンションで読むのが効果的です。
⑥ ライフスタイル提案ナレーション(感情誘導型)
忙しい毎日。だからこそ、立ち止まる時間を持ちませんか?お気に入りの香りと、静かな音楽。たった30分で、心はふわっと軽くなる。“自分らしさ”を取り戻す。そんな習慣、始めてみませんか?
ライフスタイル提案では、感情の“誘導”がポイントです。セールス感を出さず、共感→提案→余韻という形で構成しています。穏やかで優しい声を前提とし、呼吸の「間」を取ることで説得力が増します。
⑦ 科学の話題(フィトンチッドとは?)
森の中で、深呼吸したくなるあの感じ。実は「フィトンチッド」という成分が、空気をきれいにしてくれているんです。植物が発する自然の防衛物質。それが、私たちの心を落ち着かせる理由なんですね。
科学ネタは、専門用語を「わかりやすく噛み砕く」能力が問われます。難しい用語→説明→実感という構成にし、「なるほど」と思わせる文章を目指しています。語感を軽めにし、リズムが崩れないように注意しています。
⑧ 自治体PRナレーション(地域の魅力)
山と海に囲まれた、小さなまち。ここには、手をかけた野菜と、あたたかな人の笑顔があります。便利じゃないかもしれない。でも、帰りたくなる場所。それが、わたしたちの町です。
自治体PRでは、「押しすぎず、伝えすぎず」の塩梅が重要です。語彙も抽象に寄せつつ、映像と組み合わせる前提で設計します。読み手の“声色”によって魅力が大きく変わるジャンルでもあります。
⑨ YouTube用導入ナレーション(チャンネル紹介)
仕事、趣味、そして人生をちょっと楽しくする話。そんなテーマでお届けするこのチャンネル。毎週更新で、知って得する情報をゆるく配信中。あなたの耳元に、少しだけ役立つ15分を。
YouTubeナレーションは“フランクさと信頼感”のバランスが大事です。内容の具体性よりも、トーンの親しみやすさを優先しています。文字情報は少なめで、声のテンションで情報を補うスタイルです。
⑩ ショートストーリー紹介ナレーション(ストーリーテリング)
彼が最後に見た空は、夕焼けだった。二度と帰れないと知りながら、彼女はその手を離さなかった。交差する想いと、ひとつの約束。これは、5分間の小さなラブストーリー。
ストーリーテリング原稿は、「雰囲気」を伝えるための言葉選びがすべてです。具体性をあえて削り、情感だけを残すことで想像力を刺激します。BGMとの相性も意識し、読む側の“表現力”が問われる原稿です。
3. 用途別ナレーション原稿の特徴と作り方
ナレーション原稿は、用途によってまったく違う性格を持ちます。
CMとドキュメンタリーでは、言葉の選び方もトーンも構成も、まるで別物です。
それなのに、同じように書こうとしても、当然うまくいきません。
だからこそ、用途別にナレーション原稿の“設計思想”を知ることが重要です。
ここでは、代表的な4ジャンルを取り上げて、それぞれの目的や構成の考え方、現場でよくある誤解なども交えながら解説していきます。
① CM・広告用:強調、短文、インパクトを意識
CMナレーションに必要なのは、「印象に残すこと」に尽きます。
なぜならCMは、多くが15〜30秒という短尺で情報を詰め込む必要があるからです。短い時間の中で聞き手の心に残すためには、まず言葉を削り、強調したいポイントを1つに絞るのが鉄則です。
たとえば、「おいしい」「安い」「早い」と3つ訴えたい気持ちはわかります。でも、それを並べただけでは何も伝わりません。むしろ、「30秒でおいしさが伝わる言葉」を一つ選んで、それを繰り返すほうが効果的です。
ただし、広告臭が強くなると“売り込み感”が出すぎて逆効果です。語尾の抑揚でうまく中和する技術も求められます。
② 教育・情報系:構成重視、用語をかみ砕く
教育系ナレーションで求められるのは、何より「わかりやすさ」です。
聞き手が“聞いて理解できる”ことを第一に考えて原稿を組み立てます。文章は正しくても、耳で聞くと意味がとりづらい表現は避けましょう。
だからこそ、専門用語や漢語は和語に置き換え、複雑な構造の文は分割して伝えます。たとえば、「これは環境保全のための地域連携施策です」という一文も、「地域が協力して、自然を守る取り組みです」と言い換えるだけで、聞く人の理解度がまったく変わります。
PREP法が非常に効果的なのもこのジャンルです。最初に「何を伝えるか」を提示し、その理由や具体例を織り交ぜて展開し、最後にもう一度要点をまとめる。
話し言葉ベースの構成が、理解と記憶に繋がります。
③ バラエティ系:テンポと語感の面白さがカギ
バラエティ番組やお笑い系のナレーションでは、正直「理屈よりノリ」です。
言ってしまえば、多少意味が曖昧でも、テンションと語感で“勢い”を持たせられれば成立します。テンポ良く畳みかけるような文章構成が喜ばれます。
このジャンルの特徴は、文の内容よりも“読み方”に依存する部分が大きい点です。ナレーション原稿は、語尾やリズムを意識した「読みやすい形」にしておくのがコツ。そうすることで、現場での収録が格段にスムーズになります。
あえて「ツッコミ風」のセリフを混ぜたり、擬音語や流行語を取り入れるのも効果的です。
ただしやりすぎると、逆にチープに見える危険もあります。
笑わせたいのか、盛り上げたいのか、その目的を明確にして、それに応じた文体を選ぶことが必要です。
④ ドキュメンタリー・旅番組:情景描写・事実の積み上げ
このジャンルのナレーション原稿は、語りかけるよりも“寄り添う”イメージが大切です。
特徴としては、情景描写を丁寧に積み重ねて、映像とシンクロさせる力が求められます。言葉が映像を邪魔してはいけないけれど、補足も必要。非常に繊細なバランスが要求されます。
具体的には、「朝日が差し込む漁港に、人影が一つ」というように、映像の一部を切り取るような表現が多くなります。動きを実況するのではなく、空気感や時間の流れを“匂わせる”語りができると理想的です。
また、ドキュメンタリーでは事実に基づいたナレーションが中心になるため、感情に訴えつつも誇張しすぎない語彙が重要です。
「奇跡の瞬間」や「運命の出会い」など、過度に演出めいた言葉は避けるべきでしょう。
4. ナレーション原稿の書き方・構成テクニック
ナレーション原稿は、普通の文章と似て非なるものです。
「読む」ための文ではなく、「話す」ための文であり、さらに「聞かせる」ことが目的です。
だからこそ、文章が正確であるだけでは不十分。構成・音感・テンポまで含めた“総合的な設計”が必要です。
この章では、ナレーション原稿の基本的なテクニックをご紹介します。
① PREP法で組み立てる:Point → Reason → Example → Point
PREP法は、ナレーション原稿に非常に向いている構成手法です。
理由はシンプルで、聞き手が「何を伝えたいのか」を瞬時に把握できるからです。
例えば、「地球温暖化は深刻です(Point)。その理由は、氷河が急速に溶けているからです(Reason)。実際、南極の一部では過去10年で1.5倍の速度で氷が失われています(Example)。だから、私たちは今行動を変える必要があります(再Point)。」というように、主張と根拠、具体例、結論がセットになることで、内容がスッと頭に入ります。
多くのナレーション原稿でありがちなのは、理由もないまま事実を連ねてしまう構成です。結果、聞き手の印象に残らず、内容もぼやけてしまいます。PREP法を使えば、短尺でもロジックが通り、説得力のあるナレーションになります。
② 話し言葉化の工夫:書き言葉との違いを意識
ナレーション原稿を書くうえで見落とされがちなのが、「書き言葉と話し言葉の違い」です。
たとえば「〜である」「〜において」などの書き言葉は、読み上げると固くなりすぎて、聞き手に響きません。
逆に、「〜なんです」「〜してるんです」といった、ややくだけた表現は、親しみを持たせる効果があります。もちろん、トーンや用途によって“崩しすぎ”はNGですが、基本的には「自然に口から出てくるか?」を基準に言葉を選ぶべきです。
また、接続詞も見直しポイントです。「そして」「しかしながら」などを多用すると、読みにくくなりがちです。「だから」「でも」「たとえば」など、会話調に近い言い換えを意識すると、ずっと聞きやすい文章になります。
③ 発音しやすい音の選び方:ら行・た行・濁音のバランス
ナレーション原稿において、発音のしやすさ・音の気持ちよさは非常に重要です。
特にボイスサンプルや宅録向けでは、「発音しづらい構成」になっていないかをチェックする必要があります。
ら行やた行は舌の運動が多く、ナレーターの滑舌チェックにも使われる音です。あえてこれらを意識して原稿に組み込むことで、聞き手にも「この人、発音うまいな」と思わせることができます。
一方、破裂音(ぱ行・た行など)や濁音(が・だ・ば)は、アクセントとしての役割も果たしますが、多すぎると耳障りになることもあるのでバランスが必要です。連続して同じ音が続かないように、語順や言い換えで工夫しましょう。
下記の表は、原稿作成時に意識したい音の特徴をまとめたものです:
音の種類 | 特徴 | 用途の一例 |
---|---|---|
ら行・た行 | 舌の動きが多く、滑舌のチェックに適する | ボイスサンプル・教育ナレーション |
濁音 | 力強さやインパクトを与える | CM・ドキュメント強調部 |
ぱ行・か行 | 破裂音で明瞭感が出る | キャンペーン告知など強調部分 |
長音・母音多め | やわらかく聞こえる | ラジオ・ライフスタイル系 |
原稿の中で、これらを“意図的に”織り交ぜると、聞き心地が格段に良くなります。
④ 一文を短く、情報は1つずつ
ナレーション原稿でもっとも多い失敗のひとつが、「1文に情報を詰め込みすぎること」です。
書いていると気づかないのですが、話す側にとって長文は呼吸も難しく、聞く側にとっても理解が追いつかなくなります。
理想的には、1文=1情報が原則です。「〜で、〜で、〜しました」という文は、スムーズそうに見えて、ナレーターには負荷がかかりますし、聞き手の集中力も途切れます。
たとえば、「この製品は防水で、軽くて、スタイリッシュで、しかもバッテリーが長持ちします」ではなく、「この製品は防水です。とても軽くて、スタイリッシュ。バッテリーも長持ちします」と分割すれば、ずっと聞きやすくなります。
情報が複数あるときは、文を分けること。これはナレーション原稿において、非常に大事な作法のひとつです。
5. ナレーション原稿|収録・編集の工夫と注意点
ナレーション原稿は、書いて終わりではありません。
実際に「声に出す」「録音する」段階で、文字情報が“音”としてどれだけ効果的に機能するかが試されます。
原稿がどれだけきれいでも、読みづらかったり、収録時にトラブルが起こりやすい構成では、本末転倒です。
ここでは、録音を想定したうえでの原稿の整え方や、収録現場でのリアルな課題にどう対処すべきかを解説します。
① 文字数と尺のバランスを守るには?
収録現場で最も多いトラブルが「読み終わらない」「長すぎる」です。
これは、原稿の文字数とナレーション尺が合っていないことが原因です。
15秒なら60〜70文字、30秒なら120〜140文字が目安ですが、これは“普通の速度で読んだ場合”の話。テンションが高い原稿や、語尾を伸ばす表現が多いものは、もっと短くしないと収まりません。
逆に、間を多く取りたいナレーション(旅番組やドキュメント風など)は、余白のために文字数を大幅に削る必要があります。これを怠ると、「読めたけど早口だった」「尺に収まったけど聞き取れなかった」などの問題が起こります。
尺(秒) | 推奨文字数(平均) | 備考 |
---|---|---|
15秒 | 60〜70文字 | テンポ次第で最大80文字まで可 |
30秒 | 120〜140文字 | スロー系は110文字以下が理想 |
60秒 | 240〜270文字 | CMよりもドキュメント向け尺 |
文字数の確認は、GoogleドキュメントやWordのカウント機能を使えばすぐできます。目安より多ければ迷わず削りましょう。
② 句読点・改行で呼吸とリズムをつける
ナレーション原稿の中でも、句読点と改行は“視覚的なテンポ”を支える重要な要素です。たとえば、「朝日が差し込む窓辺で猫が眠る」では、ずっと同じ調子になりますが、「朝日が差し込む。窓辺で、猫が眠る。」とすれば、自然に間が生まれます。
句読点は「呼吸のきっかけ」であり、改行は「リズムの転換点」です。これらを適切に使えば、読み手は息継ぎしやすくなり、聞き手も自然に内容を理解できます。逆に、改行も句読点もない原稿は、見ただけで読む気がなくなるレベルで読みづらいです。
視認性の高い原稿は、「見て安心できる」ことも大事な条件です。
③ レイアウトと視認性:収録現場で読みやすくする工夫
スタジオでも宅録でも、ナレーターは原稿を“読みながら表現”しています。そのため、文字の見やすさや改行位置、フォントサイズなど、いわゆる“レイアウトのしやすさ”は収録クオリティに直結します。
読みやすい原稿のレイアウトには、以下のようなポイントがあります。
- 行間は1.5行程度でやや広めに
- 1文ごとに改行(1パラグラフは3行以内)
- フォントサイズは12pt〜14pt推奨
- 強調したい語句には「」やカッコ、色分け(印刷時は太字)
また、セリフ調の部分や語調に変化が必要な箇所は色や記号で印を入れておきましょう。
読み間違いやテンションのミスが起きにくくなります。
④ 宅録・スタジオ録音で役立つ原稿準備術
収録の準備は、機材や環境だけでなく、「原稿の準備」が重要です。
宅録では特に、読み間違いや読み直しが録音に大きなロスをもたらします。読みやすく整理された原稿なら、その場で何度も確認したり調整したりする必要が減ります。
また、現場によっては、ナレーターに原稿だけ渡して演出指示がまったくないケースもあります。そんなとき、原稿に「トーン:明るく」「この文は少し間を空けて」などのメモを入れておくと、演出者との意図ズレを防げます。
録音前には必ず音読チェックをして、読みづらい語順や、不要な重複がないか確認しましょう。自分が“詰まる”箇所は、聞き手にも伝わりづらい場所です。削るか、言い換えるかの見直しが必要です。
ナレーション原稿|まとめ
ナレーション原稿は、ただ文章を書くのとは違います。
なぜなら「伝えること」「聞かせること」を前提にした特別なスキルが求められるから、です。
今回は用途別に実例と構成のコツをご紹介しました。が、実際に声に出してみて、リズムや言葉の引っかかりを感じることが最大の学びになります。
もしこの記事の原稿を使ってみて、「もっとこうしたい」「別のジャンルが知りたい」と思ったら、それはあなたが“伝えること”の本質に近づいている証拠です。
ナレーション原稿づくりには終わりがありません。ぜひ試して、改善して、あなただけの伝え方を磨いていってください。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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